この記事は、次のような人におすすめです。
- AI英会話アプリを今やっておかないと自分だけ遅れをとってしまう気がする
- 頭では理解していても、いざ英語で話すとなると、三単現のSなど、英語特有のルールを間違ってしまう
- 英語力に対する「自信のなさ」や、間違えたら恥ずかしいといった「不安」がある
最近ブームになっているAI英会話アプリ。
公式サイトには「言語習得理論に基づいた科学的なアプローチ」と書いてありますが、本当でしょうか?
そこで今回は、
- 「第二言語習得論」とは何か
- AI英会話アプリは第二言語習得論のどの部分をカバーしているのか
- 「第二言語習得論」を網羅する理想の学習法
について解説します。
この記事を読むと、英語習得方法の全体像が見えてきます。今後どの部分を強化すべきかもわかります。
普段の勉強法に悩んでいる人はぜひ最後まで読んでみてください。
【この記事を書いた人】
米国企業での実務経験10年以上。アメリカには仕事で3年住みました。ブログを通じて「今すぐ英語を話せるようにならないとやばい人」へサバイバルキットの提供を目指しています。
第二言語習得論3つの仮説
第二言語習得論は、人が第二言語を習得するメカニズムの解明を目的としています。
合わせて効果的な習得方法の解明も研究テーマに含めています。
第二言語習得論は、例えば物理学における相対性理論のように、仮説を裏付ける検証結果が次々と出てくるような、何かしっかりとしたストラクチャが確立されているわけではありません。
現在、大きく3つの仮説があり、互いに反論や反証がなされています。
インプット仮説:理解可能なインプットが言語習得を可能にする
インプット仮説とは「第二言語の習得を可能にするのは理解可能なインプットだけ」という説です。
理解可能なインプットとは、自分の能力よりも少しだけレベルが高いコンテンツを読んだり、見たり、聞いたりすることです。
「習得」は無意識下で行われます。いつ、どのタイミングで「できるようになった」のか、うまく説明できないけれど、今はできるようになっている、という状態が「習得」です。
インプット仮説では、アウトプットは「学習」であって「習得」ではないという立場です。
「学習」した知識が「習得」に変わることはなく、アウトプットは限定的な役割しか果たさない、としています。
これに対し、意識的に学習したものでも、反復練習を行えば無意識的にアウトプットできるようになるという説もあります。これを「自動化モデル」と呼んでいます。
アウトプット仮説:アウトプットが習得に役立つ3つの機能
これに対して、アウトプット仮説は、インプットだけでは不十分だと主張しています。
アウトプットには言語の習得精度を高める機能があるというのです。
その機能とは次の3つです。
- 気づき機能
アウトプットを通じて自分が言いたいことと言えることのギャップに気づける
- 仮説検証機能
アウトプットのフィードバックを相手から受けることで適切に修正できる
- メタ言語的機能
アウトプットを通じて自分の話す言語を意識的にレビューし自分のものにできる
インタラクション仮説:会話者同士がお互いに理解し合う努力が重要
インタラクション仮説は、お互いが交流する中でインプットの質が高まると主張しています。
会話者同士が、話の内容を理解しようとする努力が重要で、伝わらなければ言い換える、発音を修正してみる、ゆっくり話す、などの努力が良質のインプットを生み出す、という考え方です。
結局のところインプットの重要性は変わらない
ここで留意すべきなのは、アウトプット仮説もインタラクション仮説も、インプットの重要性を否定しているわけではないと言う点です。
いずれもアウトプットがインプットの質を高めると言っているのです。
つまり、第二言語習得はインプットが前提となるのです。
AI英会話アプリがカバーしているのはアウトプットと自動化
AI英会話アプリは第二言語習得論のどこをカバーしているのでしょうか。
まず、AI英会話アプリはアウトプット仮説をカバーしていると言えます。前述した3つの機能をAI英会話アプリに当てはめると次のようになります。
- 気づき機能
AIに話しかける時に自分が言いたいことと言えることのギャップに気づける
- 仮説検証機能
AIからフィードバックを受けることで適切に修正できる
- メタ言語的機能
アウトプットを通じて自分の話す言語を意識的にレビューし自分のものにできる
そしてAI英会話アプリは、「自動化」の領域も得意です。いつでも、どこでも、何回でもスピーキング練習ができるからです。
自動化とは、学習で得た知識を反復練習で無意識的に使いこなせるようになることです。
自動化によって「ペラペラにはなる」でしょう。
ただしそれは、覚えた例文が応用できる範囲に限ります。
逆にAI英会話アプリの弱みは、理解可能なコンテンツの大量インプットを手助けする機能が限定的だということです。
つまりもっとたくさんインプットしないと、外国語で自由に話せる土台は築けないということです。
第二言語習得論を網羅した効率的な学習方法とは?
以上を踏まえ、現時点で最も効率的だと思われる学習方法について解説します。
「英語を学ぶ」から「英語で学ぶ」への転換を目指す
皆さんには資格取得や受験など、様々な事情があるでしょう。
でも、あなたが求める情報が試験問題として出てくるとは限らないので、与えられた問題を解くだけの勉強を続けると、いちばん大切な「外国語で獲得できる知識や洞察力」が制限されてしまいます。
長期的には、自分で英語を使って情報をとり、自分の考えをまとめ、アウトプットする形に変えていくべきです。
インプットは興味があるコンテンツを使う
リーディング:よく知っているコンテンツを使う
リーディングには、興味があってよく知っている内容をおすすめします。その理由は次の通りです。
- 外国語能力の足りないところを推測できる
- 推測することで知らない単語が習得できる
- その分野の単語が増えるのでさらに理解度が高まる
5分程度のサブタイトル付き動画をおすすめします。
未知の単語が2割以内のものがよいです。
読む時は、意味だけではなく文法構造まで理解するように心がけてください。
リスニング:リーディングと同じ教材を使えば効率的
リスニングはリーディングと同じものを使えば理解が加速します。
一度聞いてみて、聞き取れないところはさっさと文字で確認した方が早いです。
意味がとれるようになったら文法にも気を配るようにしましょう。
例文の暗記:会話を暗記すると効果的
例文暗記は会話文を覚える方法がおすすめです。
単文だと会話の始め方、終わり方がわからないし、状況にふさわしい表現かどうかも判断できないからです。
インプット作業は「稲刈り」ではなく「芝刈り」です。一度に全てをマスターしようとせず、何回も繰り返しインプットする中で、前回気づかなかったことに気づくようになります。
アウトプットは毎日少しずつでもやる
インプットの効果を最大化するためには、アウトプットを少しずつでも取り入れた方が良いです。アウトプットに手こずることで、今の自分に何が足りないのかがわかります。
スピーキング:まず意味を通じさせるのが第一
一度会話を始めたら、ジェスチャーも含め、自分の持っているものすべてを使って意味を伝える努力が大事です。相手からフィードバックが貴重なインプットになるからです。
余裕があれば文法や発音にも意識を振り向けるようにします。
通じさえすればいい、というスタンスでいるとブロークン英語が固定化してしまうので要注意です。
ライティング:日記のSNS投稿がおすすめ
その日学習した文法や例文を使って「自分ならどう使うか」考えながら文章を作成しSNSにポストするやり方がおすすめです。
興味のある話題を取材し、紹介記事を書いて写真と一緒に投稿するのも効果大です。
発音:音をまねる練習が大事
意味や構文をすでに理解しているコンテンツを使って、 正確にまねて何度もオーバーラッピング、または シャドーイングをします。
難しい発音を確認しておき、意識すればできるようにしておきましょう。
聞く側にとっては、イントネーションやリズムも大事です
単語と文法:文脈の中で覚える
単語は文脈の中で覚えるようにすると、 それ以外の情報、たとえば前後にどんな単語が来るかも同時に覚え られます。
これは特に動詞の場合に重要です。 主語や目的語にどのような名詞が来るかがわかるからです。
知らない単語があってもなるべく推測するようにしてから辞書をひくと、文意を予測する力が鍛えられます。
まとめ
今回紹介した学習法を全てやるべきだと言っているわけではありません。習得法の全体像を把握した上で、次は何をやればいいか、どんなツールがどこをカバーできるかを知って、効率的な学習計画の作成に役立てて頂ければ幸いです。
- 第二言語習得論はインプット、アウトプット、インタラクトの3つの説がある。
- どの説もインプットの重要性を認めている。
- AI英会話アプリがカバーしているのはアウトプット仮説と自動化モデル
- 第二言語習得論を踏まえた効率的な学習法
- アウトプットの練習は、一定のインプットができてからの方が良い
- インプットには自分の興味があってよく知っているコンテンツを使う
- 例文暗記は会話文を丸暗記
- アウトプットは毎日少しずつでもやるべき
- 発音は音をまねる練習が大事
- 単語と文法は文脈の中で覚える
ではまた。Have a good one!
【参考文献】
Principles and Practice in Second Language Acquisition by Stephen D Krashen
Extensive reading white paper by Cambridge university press
Swain (1995), Three functions of output in second language learning
An Introduction to Conversational Interaction and Second Language
外国語学習の科学-第二言語習得論とは何か (岩波新書)
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