外資系企業に勤めている人ならおなじみのRSU(Restricted Stock Unit – 制限株式ユニット)の売却タイミングについて考えてみました。
この記事は次のような人におすすめです。
- VestされたRSUの合計が自己資産の相当額を占めるほどになってきた。
- RSUをこのまま保持し続けるべきか、それとも売却すべきか悩んでいる。
- RSUは海外の証券会社に預けてあり、売却や送金の手順がよくわからないため放置している
- 売却した後の確定申告でどのぐらい税金を納めることになるのか把握できていない
この記事では、
- RSU売却に対する考え方やそのタイミング
- 海外の証券ブローカ(E*trade)を例に、売り注文から売却、送金、受け取りまでのプロセス
- 売却に伴い準備すべき税金額の試算方法
について解説します。
この記事を読むと、RSUに対する漠然とした不安が解消され、進むべき道筋が見えてきますよ。
RSUとは
RSU(Restricted Stock Unit)とは、勤め先から給与の一部として付与される自社株式のことです。ただし売却タイミングに制限があって、もらってもすぐに売却することはできません。このため従業員のつなぎ止めのために使われることもあります。
RSUは給与の一種
RSUは株式をもらえる権利を得た時点(release)では、あ、そうなの、うれしいな。と思うだけのことで特に何ができるというわけではありません。ですが事前に決められた期間を過ぎると売却できる権利が生じます(Vest)。税務的には、この時点で給与を受け取ったとみなされ、Vest時点の株価*付与された株式数*Vest時の円換算レートで確定申告をする必要があります。Vestされる側としては、まだ売ってもいないのに税金だけとられるという、ちょっと悲しい状態になりますが、給与と考えればもらったお金に税金がかかるのは当たり前の話なんですね。
さらにRSUを売却すると、その株式譲渡利益に対して所得税、住民税がかかります。
RSUを持ち続けるべきか、売るべきか
答えは、
「今すぐ売るべき」
です。
なぜ売るべきなのか
理想とする投資ポートフォリオ案を持っている場合
- あなたが理想とする投資ポートフォリオを既に持っている場合、RSUを受け取ったまま放置しておくと、資産の多様性を損なうことになってしまいます。ポートフォリオの主な目的は、企業固有のリスクを減らし、1社のパフォーマンス悪化が全体の投資パフォーマンスに大きな影響を及ぼさないように分散投資をすることです。RSUを保持することで多様性が減少し、投資のリスクが増加してしまうことは避けた方がいいです。
- RSUを受け取った後、その株式を保持するか売却するかの選択肢は、純粋に投資判断です。投資としてRSUを評価する時は、それが既存のポートフォリオ上にどう影響するのかを考えてみましょう。ポートフォリオが適切な資産配分に基づいて構築され、分散が効いた投資商品群(例:投資信託やETFなど)で構成されている場合、その中に単一の株式を置くことはポートフォリオの多様性を減らしてしまいます。つまりリスクが増える、ということです。
- もし多様性を維持したいのであれば、RSU株式を受け取った際に売却することが賢明な戦略と考えられます。
まだ自分が理想とする投資ポートフォリオ案を決めていない場合
まだ自分が理想とする投資ポートフォリオを決めていなければ、今すぐその案を作ることが先決です。そしてその方針に沿って資産の移管を始めるべきでしょう。RSUを売ったお金で何に投資するかがはっきりしていないと、投資対象の選定に手間どり、機会損失を招いてしまいます。
投資ポートフォリオ案とは簡単に言うと、
- 自分が容認できるリスク額を決めることと
- 自分に合った安全資産とリスク資産の割合を決めること
- その割合に従って資産のリバランスを行うこと
です。- リスク資産額を決めるためには、仮にリスク資産が半減したときに耐えられるかどうかを自問します。
- 耐えられるかどうか、とは、
- 短期的に生活資金がショートしないかどうか
- 老後資金が存命中にショートしないかどうか
- 暴落時に狼狽売りをせずに我慢できるか
というようなことを自分の胸にきいてみましょう。
- 今持っているRSUの総額が、持てるリスク資産額を超えているようであれば、超えている分のRSUを急いで売却すべきかも知れません。
- 「長期・分散・低コスト」の観点で考えれば、そもそも個別株それ自体がリスクの大きな資産です。それにもかかわらず、RSUという会社の制度のために、大量のリスク資産を持つことになったのはあなた個人としては想定外のはずです。
- RSU株式を保持するかどうかの判断をするもう一つの方法は、同じ株式を今日オープンマーケットで購入するかどうかを考えることです。多くの場合、その答えは「NO」ではないでしょうか。株式を購入するつもりがないのであれば、追加のリスクに対する十分な確信を持っていない可能性があります。
RSUをいつ売るべきか
- RSUはVestされたタイミングですぐ売るのが理想です。ですが、毎回少しずつVestされる株式をその都度売っていたのでは手数料がかかります。実際には年1回程度、数百万円単位で売るのがいいのではないかと考えます。
- RSU株式をVestingと同時に売却することで、予期せぬ会社のパフォーマンスの低下から自分の資産を守ることができます。
RSUをどうやって売るか
- 売却手順をルール化し、その時々の株価に躊躇することなく粛々と売却します。株価が下落している局面で売るのはメンタル的に難しい事ですが、決断できずにいると、いつまでたっても売れなくなってしまいます。暴落は明日突然発生するかも知れません。善は急げ、です。
- いつ何株売るか、最初にルールを決めたら、そのルールに従って売却を進めます。その時々の株価をRSU売却の判断材料にすると売却手続きに躊躇してしまいます。躊躇しないためには、売却後のお金で何を買うのかを明確にしておきましょう。
- RSUを売ったお金で買う投資対象を事前に決め、証券会社のサイトで強制的に「自動積立設定」するようにするのもひとつの方法です。こうしておくと、次回の積み立てまでに嫌でもRSUを売らないといけない状態になるからです。
支払う税金の準備
株式譲渡利益に対して約20%の税金がかかります。また予定納税もかかる可能性があります。原資を確保しておくことが必要です。譲渡利益の20%を所得税および住民税支払い用に現金を引き当てて置き、所得税の2/3を予定納税支払い分としてとっておいたほうが良いと思います。
E*tradeでの株式売却から日本の銀行口座への送金について
ステップ
- 日本側でお金を受け取る銀行を決めて口座を開設する
- E*tradeにログイン後、E*tradeからの送金先銀行を登録する
- 売却する株式を選んで売り注文を出す
- 売り注文を出したとメールが来る
- 約定したとメールが来る
- 送金したとメールが来る
- 受け取り側の日本の銀行から着金したとメールが来る
- 受け取り手続きをする
- 審査完了を待つ
- 口座に入金したとメールが来る
- ドルを売って円に替える
- 円をメインバンクに送金する
日本側で送金を受け取る銀行を決める
海外仕向け地
送金設定

コメント